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ブックマーク / econ101.jp (14)

  • ジョセフ・ヒース「哲学者がキャンセルカルチャーを懸念すべき理由」(2024年1月25日)

    この数年、哲学の同業者たちが、オンライン上での流行りに飛びついて、様々な事柄について自身の考えを述べた学者を罰したり、脅そうとしているのを見て、私は驚き、失望してきた。少し上から目線に聞こえるかもしれないが、哲学者がこうした行動をとっているのに驚いていることを認めざるを得ない。ソクラテスの裁判と死を描いたプラトンの対話篇を最初に読んだとき、私は自然と、アテネの市民裁判官たちではなく、ソクラテスの側に感情移入した。哲学研究者のほとんども同じように感じるか、似たような原体験を持っているものだと思い込んでいた。だから、同業者の多くが、自身の考えを語ったことで糾弾されている哲学者(当初は男性が多かったが、最近は女性もいる)の側ではなく、市民裁判官の方をこぞって真似ようとしているのを見て驚いたのだ。 こうした行動の多くは、所属機関からの解雇を要求するのではなく、その人の1日を台無しにしたいだけなら、

  • ジョセフ・ヒース「キャンセル・カルチャーはシンプルに説明できる」(2023年12月3日)

    今や誰もがキャンセル・カルチャーについて論じるのに飽き飽きしている。そろそろ私たち研究者が議論に参加してもいい頃だろう。最近、イブ・ンの“Cancel Culture: A Critical Analysis”『キャンセル・カルチャー:批判的分析』を興味深く読んだ。このはキャンセル・カルチャーにそれほど批判的というわけでもなかったが、この現象の歴史を提示している点で有益だった。ただ残念なことに、このは事例を豊富に載せているだけで、キャンセル・カルチャー現象の明確な定義や説明は提示していない。そこでエントリではこの空白を埋めるために、根底にある社会的ダイナミクスの分析に基づいて、キャンセル・カルチャーのシンプルな理論を提示したい。 議論を始める上でまず明確にしておくべきは、キャンセル・カルチャーの起源が政治的なものでも文化的なものでもないということだ。キャンセル・カルチャーは、ソーシャ

    ジョセフ・ヒース「キャンセル・カルチャーはシンプルに説明できる」(2023年12月3日)
    Hige2323
    Hige2323 2023/12/08
    "端的に言えば、あなたがキャンセル・カルチャーをまだ問題だと思っていないとしたら、それはあなた自身がこの問題の一部だからかもしれない。"
  • ジョセフ・ヒース「白人のマウント合戦:コフィ・ブライトの仮説を拡張する」(2023年8月25日)

    アメリカでは人種的正義を求める闘いに馳せ参じれば並外れた文化的名声を獲得できるため、世界中で模倣者を惹きつける傾向を生んでいる リーアム・コフィ・ブライトが『Journal of Political Philosophy(政治経済学ジャーナル)』に最近投稿した論文「白人のマウント合戦」での、アメリカの人種政治についての見解を大いに楽しませてもらった。まず最初に、この論文は査読の通過がほぼ不可能な形で執筆されているため、無事掲載されたこと自体に驚かされた。アカデミアにおける哲学論文は、査読者全ての怒りを鎮めることで、あたかも委員会によって書かれたように見えてしまう問題に悩まされている。さらに重要なのが、私見だが、アメリカ文化戦争に、ブライトのようなイデオロギー的に客観的なスタンスを示すことの極めての有用性である。 ハッキリ言っておくが、私はブライトの見解のほとんどに同意できない。しかし、彼

    ジョセフ・ヒース「白人のマウント合戦:コフィ・ブライトの仮説を拡張する」(2023年8月25日)
  • ノア・スミス「終末論者にならないようにね」(2023年2月22日)

    このところ,メディアでさかんに論議されているものといえば,アメリカに押し寄せてる十代の不幸の原因はいったいなんなのかってテーマだ.先日,『ワシントンポスト』記者のテイラー・ローレンツが連続ツイートでこう論じていた――いま十代の子たちが不幸せになっている主な理由は,単純に,自分たちを取り巻く世界が「地獄めいた場所」だと彼らが認識しているからにすぎないんだそうだ: きらびやかな悲観論は,なんの役にも立たないよ このところ,メディアでさかんに論議されているものといえば,アメリカに押し寄せてる十代の不幸の原因はいったいなんなのかってテーマだ.先日,『ワシントンポスト』記者のテイラー・ローレンツが連続ツイートでこう論じていた――いま十代の子たちが不幸せになっている主な理由は,単純に,自分たちを取り巻く世界が「地獄めいた場所」だと彼らが認識しているからにすぎないんだそうだ: タイラー・ローレンツ:みん

    ノア・スミス「終末論者にならないようにね」(2023年2月22日)
    Hige2323
    Hige2323 2023/03/22
    日本オワタ論にも共通するもんがあるよね
  • ジョセフ・ヒース「ウォーク(正義に目覚めた一部の左派)は戦術・信条において裸の王様・女王様である:リベラリズムの皮を被った反自由主義」(2021年6月23日)

    ウォーク政治活動を理解する上で最も重要なのは、これは伝統的なタイプの「反自由主義」とは異なっており、「反自由主義的リベラリズム」の一種であると考えた方がよいということだ。 Joseph Heath: Woke tactics are as important as woke beliefs Woke language hides illiberal tactics in liberal aims Posted by Joseph Heath on June 23, 2021 ここ数年、進歩主義を装った反自由主義が世を覆いつつあったが、ついにアメリカリベラルたちは団結して行動を起こし始めた。リベラルたちは、「ウォーク」〔woke、社会問題に対して目覚めた(=wake)人々を指す〕の政治活動やイデオロギー的影響力の拡散を阻むために、いくつかの組織を創設したのである。〔ウォークと戦う〕リベラル

    ジョセフ・ヒース「ウォーク(正義に目覚めた一部の左派)は戦術・信条において裸の王様・女王様である:リベラリズムの皮を被った反自由主義」(2021年6月23日)
  • ピーター・ターチン「社会科学者が戦争を研究しなければならない理由」(2012年3月18日)

    一月ほど前、私はノックスビルでの社会進化論のワークショップに続けて行われた公開討論会に参加した。討論会で私は、ジェリー・サブロフと一緒に、「戦争は社会進化における創造的原動力である――戦争は、人類を村落の生活から巨大な国家での生活へと変貌させ、人類に都市や文明を築かせ、究極的には我々の生活に平和をもたらした」と主張した。尊敬すべき学僚である、ザンダー・ヴァン・デア・レーウとティム・ケーラーは、我々のこの命題に反論した。討論会の最後に、聴衆の投票があり、我々側は完全に敗北を喫した(我々の命題に賛成の投票は5%くらいだったと思う)。まあ、私は特に気にしていない。我々への反論が素晴らしいから聴衆は揺り動かされたわけでではなく、単に多くは「戦争に反対してます」との理由で投票したとハッキリと感じられたからだ。 私は最近、イーサン・コクランとアンドリュー・ガードナーが編集した “Evolutionar

    ピーター・ターチン「社会科学者が戦争を研究しなければならない理由」(2012年3月18日)
  • ジョセフ・ヒース「人種差別を再定義する:伝統的人種差別と制度的人種差別」(2018年3月6日)

    Redefining racism Posted by Joseph Heath on March 6, 2018 | Ontario, race 最近世間でちょっとした意味論的〔言葉の定義使った〕お遊戯がよく行われているが、そういったお遊戯は分析する価値があるように思われる。(哲学者は「意味論的な問題」に拘ってよく批判を行うのだが、哲学者の誰かがそういった批判をこのお遊戯に対して行ったら良いんじゃないか? と) カナダ社会をあらゆる社会制度と十把一絡げにして、全面的かつ体系的に人種差別主義的である、と糾弾するのが、いたる所で非常にスタンダードになってきている。しかしながら、「人種差別」という言葉の使われ方には、重要な曖昧さがあるのだ。人種差別を批判する人達はしばしば、「人種差別」という言葉の2つの全く異なる意味をふらふらと言ったり来たりして使うことで、ある意味で批判の効力を弱めてしまって

    ジョセフ・ヒース「人種差別を再定義する:伝統的人種差別と制度的人種差別」(2018年3月6日)
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    Hige2323 2020/07/18
  • ピーター・ターチン「左派が国境の開放に反対しなければならない幾つかの理由」(2020年7月9日)

    The Left Case against Open Borders July 09, 2020 by Peter Turchin このブログの読者ならご存知のように、私がここで表明している意見は、完全に無党派的で、イデオロギーも皆無だ。私の主たる関心は、科学が導くところにある。イデオロギーに基づいた考えは、データより学説が優先されており、それは科学ではない。また一方で、イデオロギーの信奉者は、信奉する学説の性質に従って、事実を無視したり捻じ曲げたりしている(例えば、『人類の社会進化に関するアナーキスト的見解』〔サイトでの翻訳はここ〕を参照)。 しかしながら、これは、イデオロギー的な立場から出てくるものが、全て間違っていることを意味しているわけではない。マルクス主義を例にとってみよう。マルクス主義者は、今や特定方面では「害虫人間」レッテルとして使われていることを私は知っている。なので、

    ピーター・ターチン「左派が国境の開放に反対しなければならない幾つかの理由」(2020年7月9日)
  • タイラー・コーエン「(特に日本の)経済学者はイデオロギーバイアスがあって権威に弱い?」

    Tyler Cowen “Ideological bias and argument from authority among economists” Marginal Revolution, September 5, 2019 と,いうのがモフセン・ジャブダーニとハジュン・チャンの新論文のテーマだ。以下は論文要旨からの抜粋。 19か国の経済学者に対してオンラインでのランダム化対照実験を行うことで,我々は経済学者たちの見解に対するイデオロギーバイアスの効果を検証した。我々は参加者に対して様々なテーマに関する有力な経済学者の言説を評価するよう求めるとともに,それぞれの言説の主張者の名前は参加者に知らせずにランダムに割り振った。各言説について,参加者は主流派経済学者の名前,イデオロギーの異なる非主流派ないしは主流派色の薄い経済学者の名前,名前なしのいずれかを提示された。我々は,イデオロギーの異

    タイラー・コーエン「(特に日本の)経済学者はイデオロギーバイアスがあって権威に弱い?」
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    Hige2323 2019/09/06
    ぱっと頭に浮かぶのが慶應のあの人とか同志社のあの人
  • ジョセフ・ヒース「少年とセックスと本とビデオゲーム」(2017年8月2日)

    Boys, sex, books, video games Posted by Joseph Heath on August 23, 2017 | gender 教育者のほとんどが気づいていることがある。我々の社会において男の子がを読まなくなっていることだ。「文学の危機」とまで呼んでしまうのは少し大げさかもしれない。それでも、男の子がを読まなくなっている現象は現在進行であり、問題でもある。私には12歳の男の子と13歳の女の子がいるので、親としてここ数年にかけて、この現象を注視してきた。おかげで文学の中でもYA(ヤングアダルト:若年層向け)分野で何か起こっているのかを、私の同世代の誰よりも精通することにもなってしまった。よって以下、この分野におけるいくつかの観察事例だ。 女性は小説一般において読者層の多数派を占めているわけだが、YA文学分野では、(成功した)作家の多数派も女性になっている

    ジョセフ・ヒース「少年とセックスと本とビデオゲーム」(2017年8月2日)
  • サイモン・レン=ルイス「放送メディアはいかにしてメディアマクロをつくりだしたか」(2018年5月14日)

    [Simon Wren-Lewis, “How the broadcast media created mediamacro,” Mainly Macro, May 14, 2018] アメリカメディアについて〔Voxニュースの〕カーロス・メイザがやっている論評シリーズを見ていないなら,ぜひ見てみてほしい.この最新動画では,ニクソンとトランプそれぞれの調査の比較がうまくいかない理由を論じている.かんたんに言ってしまえば,理由はフォックスニュースにある.ニクソンの場合,共和党支持の有権者たちの大半は主流テレビネットワークのどれかからそのまま情報を得ていた.その結果,〔ウォーターゲート事件の〕もみ消しがどれほどのものだったか明らかになると,共和党の政治家たちはニクソンを弾劾するよう共和党支持者からの圧力にさらされた.今日,共和党支持の有権者たちはトランプとその関係者たちへの捜査をはげしく攻撃す

    サイモン・レン=ルイス「放送メディアはいかにしてメディアマクロをつくりだしたか」(2018年5月14日)
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    Hige2323 2018/05/18
  • スコット・サムナー「大人向けSFとしての日本」

    [Scott Sumner, “Japan as sci-fi for grown-ups,” The Money Illusion, May 2, 2018] SFは,特に若者に人気だ.年をとるにつれ,宇宙旅行の物語への私の興味は薄れ,したがってSFを読むことは減って他の文学を読むことが増えた.でも,異世界の物語への興味が薄れたことはない.そして日が面白いのはその点だ.東京の各部がそれほど未来的に見えるというわけじゃない.江戸時代の日にだってある種 異世界の暮らしがあったし,それが西洋での暮らしより明らかに劣ってるってわけじゃなかった.実際,1700年まで戻ってみれば東京は世界最大の都市で,120万の人々が実に興味深い文化を育んでいた. 日を訪れた経験は,今後の私の人生で二度と無いくらい,異世界訪問の経験に近いものだろう. PS. 最近の投稿で私はアメリカの「文化の盗用」なる狂った

    スコット・サムナー「大人向けSFとしての日本」
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    Hige2323 2018/05/04
  • アレックス・タバロック 「トランプとヒラリーの性別が逆だったら」(2017年3月8日)

    ●Alex Tabarrok, “Gender Reversal Teaches Uncomfortable Lessons”(Marginal Revolution, March 8, 2017) ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの性別が逆だったら二人の討論の様子は聴衆の目にどう映っただろうか? 二人の研究者がその疑問に取り組んだ。トランプとヒラリーの(討論会での)セリフだけではなく身振り手振りも完全に再現した芝居を上演したのだ。ただし、トランプの役を演じるのは女性(役名はブレンダ・キング)でヒラリーの役を演じるのは男性(役名はジョナサン・ゴードン)という捻りが加わっている。 女性がトランプのような攻撃的な姿勢――相手の発言を頻繁に遮り、すぐに相手をなじる――をとれば決して見逃してはもらえないだろうし、反対にヒラリーが男性だったらその理知的な感じにしても冷静沈着な感じにしてもずっ

    アレックス・タバロック 「トランプとヒラリーの性別が逆だったら」(2017年3月8日)
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    Hige2323 2017/03/09
  • ポール・クルーグマン「苦しむ日本がとるべき道筋」

    Paul Krugman “The Right Course for a Troubled Japan,” Krugman & Co., November 26, 2014. [“Structural Deformity,” The Conscience of a Liberal, November 20, 2014.] 苦しむ日がとるべき道筋 by ポール・クルーグマン Stephen Crowley/The New York Times Syndicate 日の安倍晋三首相が消費税増税の延期を模索してるのは,正しい.延期はいい経済政策だし,ぼくにとってはかなり新鮮な経験でもある――国のリーダーと会って,正しい政策の主張をして,その相手がまさにそのとおりにやってるんだもの.(もちろん,同じ主張をしてた人はぼく以外にたくさんいる.) ただ,懐疑の声もたくさんある.全面的に正当な疑いだ:

    ポール・クルーグマン「苦しむ日本がとるべき道筋」
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    Hige2323 2014/11/29
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