著者は公益社団法人シャンティ国際ボランティア会の職員として,カンボジアの難民キャンプで子供たち向けに図書館活動や絵本の出版などに従事してこられた。本書は,その経験を生かして東日本大震災の被災地の子供たちへ本を届けるために移動図書館事業を立ち上げ,展開していく過程を描いたドキュメンタリーである。 何より驚かされるのは,目的実現に向かって遺憾なく発揮される彼女の発想力,決断力,行動力である。大災害に遭った地域に対する移動図書館事業はこれまでにもあったが,車両登録や運転手の確保などさまざまな条件をクリアする必要があるために,事業開始に時間がかかる場合が多かった。 しかし,難民支援事業で鍛えられた彼女はこれらのハードルを軽々と飛び越えていく。まるで日本の図書館界の閉塞状況を打ち破るかのように。 なぜ彼女はこんなに強いのだろうか? そんな思いを抱きながら読み進めていくと,四章に「本のチカラを信じて」