【書評】『パチンコ 上・下』/ミン・ジン・リー・著/池田真紀子・訳/文藝春秋/各2400円+税 【評者】大塚英志(まんが原作者) 今年ならミン・ジン・リー『パチンコ』でもいいし、去年ならポン・ジュノの映画『パラサイト』、少し前ならゾンビアニメ『ソウル・ステーションパンデミック』と、韓国の小説や映像に触れる度に思うのは、韓国にはまだ描くべきものが歴然としてある、ということだ。 個人のミニマムな世界では描き得ない歴史やあるいは「格差」などという妙に社会学的な言い方に収めないで「階級」を、ゾンビアニメを以てさえ毅然と描く姿を見る時、「文学」や「映画」を社会が必要としているようでひどく懐かしい。 それは中国SFにも言える。しかもそれら東アジアの表現は怯むことなく、一周先の資本主義と結びつき、世界化している。『パラサイト』だけの話でなく、文革を描くSF『三体』が平然とNetflixと結びつく。そのこ
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