読書をしてたそがれ時のつれづれをまぎらわす。手を伸ばして、無造作に積んである本から一冊を取り出し、パラパラとページをめくる。切れ目がはっきりとしない文章の中で、瞬間瞬間の自分の心の姿――悲しかったり、うれしかったり、ときにがっかりしたり、意味もなく落ち込んだり――そのすべてがそこにある。言葉のリズムに身を任せて、夢うつつの時間がぼんやりと過ぎ去ってゆく…。 こんな書き出しをすると、どこぞの貴族の令嬢だろうか?と思われても仕方あるまい。しかし、自己弁護のために言うと、それは全然違う。私は(一応ギリギリ23区内ではあるが)東京都内のちょっと外れたところでひっそりと過ごす生粋のイタリア人なのだ。 なぜ生粋のイタリア人が古典に惹かれたのか 懺悔することが多々あるなか、一番の変態癖はずばり日本の古典文学に対する究極の愛。職場ではもちろん秘密にしているし、親しい友達以外の人にカミングアウトするのは恐ろ