―― 郷原さんは河井克行・案里夫妻の公職選挙法違反事件について、安倍晋三前総理や菅義偉総理(当時は官房長官)は克行氏が広島県内の有力政治家たちに現金を配っていたことを認識していたはずだと指摘しています。 郷原信郎氏(以下、郷原): それに関しては、案里氏をめぐる特殊な状況に注目する必要があります。案里氏が擁立された参院広島選挙区は、長年にわたって2つの議席を自民党と野党が分け合う形になっていました。自民党の現職として当選を続けていたのは、岸田派の重鎮である溝手顕正氏です。自民党はここに2人目の候補者として案里氏を強引に擁立したのです。 これには菅氏と岸田派会長である岸田文雄氏の権力闘争が関係していると思います。菅氏は2019年に新元号を発表したことで、「令和おじさん」として注目されるようになりました。同年5月には官房長官として異例の訪米を行い、存在感を高めます。そのころ、安倍氏は岸田氏を自