黄色く色づく木々が並んだ道端で、その男性は1人、ヤマブドウのような木の実を食べていた。 北海道恵庭市の市街地から南へ数キロ。ナラやシラカバの林の合間に、平野や牧草地が広がる。15年ほど前、そこで佐藤さん(40代男性・仮名)は男性に声をかけた。 「こんにちは」 以前、近くの牧場から手を振ってくれた人かと思い、尋ねた。 「そこの牧場の人ですよね?」 「そうです」 「どこに住んでるんですか?」 「あそこの小屋で寝てるよ」 男性の身長は165センチほど。灰色の上着に黒っぽいズボンをはいていた。年上のようで、歯がほとんど無いように見えた。 「……ご飯とかちゃんと食べてます?」 「あんまりまともなものは出てない」 男性は、近くの「遠藤牧場」に住み込みで働いていた。男性ら知的障害のある60代の3人は今年8月、この牧場で長年「奴隷労働」をさせられていたとして、経営者家族と恵庭市に計約9400万円の損害賠償