以前、日本の金融機関で働いていた時にした会話を、今でも鮮明に覚えている。その日私は、 不動産関連の研究所に出向していたある社員に初めて会った。当時、「出向」という習慣について知らなかった私は、「なぜ出向されたのですか?」と短刀直入に聞いてみた。それに対して彼は、「わからない」と答えた。私はとても驚いた。理由なしで異動を命じられることなど、アメリカでは考えられないことだからだ。混乱した私はさらに質問をした。「もともと不動産部で働いていて、その分野での経験を積むためにそこに出向されたでしょうか?」彼の答えは、「いや、不動産関連の仕事をしたことはありません。出向前は普通のローン営業部で働いていました」。私はますますびっくりした。「出向後は今の研究所で身につけた経験を活かすために、きっと不動産部に配属されるのではないでしょうか」。そう私が言うと、「その可能性はありますが、そういった話は一切聞いてお