数年前に話題になった本を、いまさらながら読んでみた。『男のパスタ道』(土屋敦)。おいしいペペロンチーノをつくることがこの本の表面上の目的である。しかし真の目的は、1つのことを徹底的に論理的に探究するとどうなるかを試してみることである。シンプルなペペロンチーノだからかろうじて240ページほどに収まっているが、これがボロネーゼだったらタマネギの種類や豚肉の産地にまで話がおよび1000ページをゆうに超えてしまうだろう。 パスタそのものの食感の科学的根拠を突き止めるためにわざわざパスタを粉砕してデンプンとグルテンに分けてそれぞれをゆでてみたり、パスタをゆでる湯の塩分濃度を何段階にも変えてみたり。論理的に推論し、それを実証する作法こそを、この本は示している。生物学者・福岡伸一さんの『生物と無生物のあいだ』を読んだときに感じた「科学者の息づかい」と同質のものを、この本の行間からも感じた。 いま教育現場
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