新型コロナウイルスが蔓延する少し前、「宅配クライシス」という言葉が世間を賑わしたことがあった。 当時は際限のないノルマ、サービス残業は当たり前という過酷な労働環境で、ドライバー社員は疲弊しきっていた。そこで会社側は、こうしたドライバー社員の過酷な状況を世間に訴えることで世論を味方につけ、値上げを敢行した。 ちょうどその頃に宅配便業界を離れた私だが、あれから5年、現場はどう変わったのか? 「値下げ」がすべての始まりだった そう遠くもない昔、現場では他社の伝票を剥がし自社の伝票に貼りつけるくらい荷物を取り合っていた。やればやっただけ稼げた時代。ライバル社同士がバチバチと火花を散らしていた。 ある意味、その時代が宅配便ドライバーにとって全盛だったような気がする。 それがいつしか、お互い荷物を譲り合うようになった。薄利多売、送料の適正価格が崩れ始めたのだ。営業で荷物を取れば取っただけ自分の首を絞め