前回、前々回で、筆者はコミケの非効率性と文化保存の認識の欠如について書いた。しかし、どうも問題が正しく認識されていないようだ。 なぜ複製のみが文化財産の消失を防ぎうるか 情報が後世に保存される確率を最も上げるのは、複製である。この単純な事実が理解されていない。どうして、どこの馬の骨ともしれぬ個人の当てにならぬ、勝手気ままで、品質も期待できないような複製が、情報の保存に役立つのか。なぜかと言えば、保存されることにより、情報が消失する確率が下がる、すなわち保存される確率が上がるからである。 情報がひとつの媒体に縛られているというのは、とても当てにならない。ここの情報媒体は、とても簡単に消失してしまう。 まず、単にその媒体が、経年劣化により腐ったり磁気情報が弱まったりして、読み込めなくなるという問題がある。紙の寿命は、それほど長くない。確かに、千年前に書かれた文章が、その書かれた紙ごと現存してい