俗に日本で「読むと狂う」とキャッチコピーがついた本に『ドグラマグラ』(とその作中作である「ドグラマグラ」)がありますが、本書『黄衣の王』のタイトルになっている架空の戯曲「黄衣の王」も、読むと狂う、読んだ者に災厄をもたらすといわれ各国で発禁処分をうけている設定。収録されている短編4作は、いずれもこの読むと狂う戯曲「黄衣の王」をうっかり読んだがゆえに狂気に陥ったり理解不能な怪奇事件に見舞われたりする人々の話。「黄衣の王」そのものの内容は断片的にしか明かされず、むしろこれ全部読ませて!とやきもきしました。 ラヴクラフトに先行する作品ですが、この「黄衣の王」の存在がラヴクラフトに影響を与えたといわれ、「黄衣の王」にまつわるこの一連の短編をクトゥルフ神話体系の一部と見なす見解もあるらしい。まあ納得のおどろおどろしさ。作者自身が作家になる前は画家、イラストレーターだったことも関係するのか、絵を描く人物