トヨタ自動車・豊田章男社長が、5月13日の記者会見で日本自動車工業会・会長として「終身雇用の継続は難しい」との認識を示した。その前提からわかるように、自動車業界全体としての認識を示したものなのだが、なぜか、ネットでは日本社会の「終身雇用」は終わりだといったふうな話題になって、なんというか、盛り上がっているのを見た。 が、日本にはそもそも「終身雇用」はないと言っていい。一部にそう見える現象がまったくないわけでもないが、日本の「終身雇用」と呼ばれている雇用制度は、日本社会全体から見れば、ある種の錯覚にすぎない。 例えば、10年も前になるが、NIRAの研究報告書『終身雇用という幻想を捨てよ』でも、「そもそも、終身雇用制と呼ばれるような長期雇用(より正確には期限の定めの無い長期雇用)と年功賃金の組み合わせを実現できた企業は、ごく一時期のごく一部の企業に過ぎない」とまとめられていた。指摘されている事