先日、飲み会の席に、ナマコが出てきた。 スライスしたナマコにポン酢。 ナマコの食べ方としては、かなりポピュラーなものだと思う。 僕は自ら好んでナマコを注文することはない。 味や食感が嫌い、というわけじゃないんだけど。 ナマコを食べると、あの夜のことを思い出す。ただそれだけだ。 あれは、僕が大学生のときだった。 当時、母は重い病で入院しており、僕は病室にいた父親とふたりで、病院の近くの寿司屋に夕食を摂りに出ることになった。 正直、父親とふたりで食事をするというのは、気が重くて仕方がなかった。 もともと世間話というのがお互いにあまり得意ではなかったし、「彼女できたか」とか「酒の飲み方を教えてやる」とか、そんな話題しかない父と、テレビゲームと本にしか興味のない僕(まあ、これは今でも似たようなものか)に、まともな会話なんて、成り立つわけがない。 夜は「飲みに行く」ときどき「家族全員を追い立てて、食