宝塚を退団した生徒が誰しも通らねばならぬ道がある。宝塚からの心の退団である。これが一番大変だと私は思う。歌劇団を卒業する時は、退団発表をしたその日から、最後に大階段を降りる日まで沢山のイベントがあり、最後は多くのファンの方に見送られるものである。もう思い残す事は無いからと、殆どの人が語り旅立ちを決意する。「退団は特急列車から飛び降りる様なもの」と言ってた人がいた。皆でずっと同じ列車に乗っていた筈なのに、急に飛び出して自分の足で歩けと言われるのである。次の公演を観に行った日…そこにいない自分を見て、退団した事を現実として受け止めて何だか寂しくなる。沢山の人に「おめでとう!お疲れ様!」と言われるから、当時はこういった喪失感を何だか言葉にしてはいけない気もしていた。 心が宝塚にある。そんな感覚が無くなる時、それは自分が新しい世界に飛び込み、新しい人に出会い、それを積み重ね、そこに段々と情が湧いて