取材ノート ベテランジャーナリストによるエッセー、日本記者クラブ主催の取材団報告などを掲載しています。 今年7月、BS11のスタジオから香港に電話を入れた。相手は「民主化の女神」とも呼ばれる周庭(アグネス・チョウ)さん。逃亡犯引き渡し条例改正案に反対するデモ隊の一部が立法会に突入した直後だった。 周さんは、「過激とか、暴徒とか決めつけないでください。私たちは絶望と闘っているのです」と流ちょうな日本語で必死に訴えた。 香港市民のデモ拡大の動きに中国政府は、深?に集結させた武装警察のデモ鎮圧訓練の様子を勇ましい行進曲も付けて放映し始めた。その映像を見た瞬間、私の脳裏には30年前、6月の天安門の出来事が鮮烈によみがえってきた。 ◆観光ビザで北京入り 民主化を求める学生が天安門で座り込みを続ける1989年5月20日、中国政府は北京市に戒厳令を布告した。この時、北京にはゴルバチョフ訪中という中ソ和解