平安時代後期に描かれたとされる国宝「源氏物語絵巻」について、名古屋市の美術館が赤外線を使って調査したところ、絵の下に複数の下描きが鮮明に残されていることが分かり、謎の多い絵巻の制作過程を解明する手がかりになるとして注目されています。 現存する4巻のうち3巻を所蔵する名古屋市の徳川美術館では、絵巻の修復に伴い、赤外線を使って詳細な調査を行った結果、絵の下に残された墨で描かれた複数の下描きを鮮明に撮影することに成功しました。 このうち主人公の光源氏が妻の女三宮が生んだ赤ん坊の薫を抱いている場面では、完成した絵では薫は両手を産着の中に入れたままにしているように見えますが、下描きでは光源氏に向かって愛らしく両手を伸ばしているように描かれていたことが分かりました。この場面は、薫が自分の子どもではないことを知っていた光源氏が、薫の笑顔を見ながら、自分が過去に犯した過ちを思い起こす姿を描いたとされていて