『宇宙はなぜこのような宇宙なのか――人間原理と宇宙論』講談社現代新書 青木薫/著 「青木薫」という名前は、一般的にはそう知られてはいないかもしれないが、翻訳モノの理系ノンフィクションを読む人にはお馴染みの名前だろう。著名な理系ノンフィクションを数多く手がける翻訳者として知られている。「青木薫訳」というのは信頼のブランドであり、「青木薫訳」の作品を選んでおけば間違いない、と言って言い過ぎではない。 以前僕は、「光速より速い光」という作品を読んだことがある。しかし、読む前にちょっと躊躇した。何故なら、少しでも物理を齧ったことがある人ならあまりに胡散臭いタイトルだからだ。アインシュタインの相対性理論によれば、どんなものも光速度を超えることはない。だから「光速より速い光」など、存在するはずがないのだ。トンデモ本だろうか…とも思ったが、訳者が「青木薫」であることに気づいて買うことに決めた。結果的には