純文学でありながらサスペンス的手法も取り入れる現代小説の旗手であり、近年は『教団X』の大ヒットで知られる芥川賞受賞小説家・中村文則(42歳)は、努めてニュートラルな口調でアフターコロナをこう予言した。 「このコロナウイルスはこれから少しずつ世界が悪くなっていく速度を劇的に上げてしまうのだろうと思っています。見せかけの好景気の正体が暴露され、差別や格差が助長され、人と人の断絶は進み、より内向きになっていく。コロナは天災ですが、アフターコロナに起こるのはおそらく人災です」。 【写真】芥川賞作家の中村文則さん(42歳) そして言葉を継いだ。「今回出版される小説の中にも書きましたが、いまの空気は戦前戦中のそれとよく似ている。もともとは世の中が悪くなって行くのを見据えて書いた新聞連載でしたが、ちょうど当てはまってしまったなという感じはありました」。 4月16日に発売された新作『逃亡者』(幻冬舎)で中