ぼくが初めて買ったスウィンドルのレコードは、〈ディープ・メディ〉から出た2012年の“ドゥ・ザ・ジャズ”なので、彼の音楽を最初からリアルタイムで聴いてきたわけではない。彼がロンドンの〈バターズ〉からシングルをリリースしていたことも、2009年にすでに自分のレーベルからアルバム『カリキュラム・ヴィータイ(履歴書)』を出していたことも、あの赤いスリーヴが店頭に並んだときは知らなかった。でもあのベースラインとハンドクラップを聴いて、一瞬でぼくは彼の虜になってしまった。当時のダブステップ界隈ではテクノへの接近がひとつの流れになっていて、DJのピンチが言うように、それはある意味「コールド」な感覚を有するものだ。そこにスウィンドルがあのジャジーでファンキーな熱い曲を持ってきたのだから目立たないわけにはいかなかった。 2013年、スウィンドルが〈ディープ・メディ〉からアルバム『ロング・リヴ・ザ・ジャズ』
アンダーグラウンド・スーパーグループ? ホントかよ? いかにもハイプな称号に思えるが、フューチャー・ブラウンはたしかにアンダーグラウンド・スーパーグループだ。欧米メディアはもちろんのこと、僕のまわりでも昨年末から「12インチ聴いた?」とか「アルバムどうだった?」とか、なにかと話題になっている。「アルバムよりシングルのほうが良かったんじゃない?」とか、「でも、よくよく聴いたら良かった」とか、FKAツイッグスのときに似ているかもしれない。 メンバーは、ファティマ・アル・カディリ(クウェート出身で、昨年ハイパーダブからアルバム・デビュー)、ダニエル・ピニーダ&アスマ・マルーフ(LAを拠点とするイングズングスのふたり組。ナイト・スラッグス一派)、Jクッシュ(シカゴのジューク天才児、ラシャドの作品で知られる〈Lit City Trax〉主宰)の4人。ね、スーパーグループでしょ? いまアンダーグラウン
『レイト・ナイト・エンドレス』には姿勢がある。音楽は、時代と関連づけて語られるものであると同時に、何度も繰り返し体験できる楽しみなのだ。ふたりのベース探求者は、アルバムを通して、そう主張している。 実際、これはクオリティの高いアルバムだ。話題性のみで終わらせないぞと、意地でも良い作品にするんだという気概を感じる。ヴァリエーションも豊かで、ロマンティックな側面もある。以下のインタヴューで本人たちが言っているように、これは、「クラブとリヴィングを繋げる音楽」だ。 簡単に、ふたりの紹介をしておこう。 エイドリアン・シャーウッドという人物の名前は、少なくとも5年音楽を聴いたら覚えることになる。それほど彼は、コンスタントに、ポストパンク時代から延々と、スタジオの卓の前に座って、フェーダーやつまみをいじりながらダブ・ミキシングをし続けている。 音の電気的な加工、あるいはミックスを変えることがひとつの創
2012年のとある木曜日の深夜、初めて行ったバック・トゥ・チルでのこと。ダブトロ、100mado、そして中心人物ゴス・トラッドによる硬派なダブステップに続いたENAのステージは、まさに異色そのものだった。音が溶け出しているかのような抽象的なリズムと、緩やかに跳ね上げるベースライン。期待していた「いわゆる」ダブステップは流れなかったものの、素晴らしいミュージシャンを発見した喜びで僕は包まれていた。 2006年にログ・エージェント名義で参加した〈FenomENA〉から出された日本のドラムンベース・コンピレーション『Tokyo Rockers: The Best of Japanese Drum & Bass Vol.1』がENAの公式なデビューになる。翌年には自身のレーベル〈イアイ・レコーディングス〉を立ち上げ、7インチ・シングル「アダウチ/ カントリー・ダブ」をリリースした。現在のENAのス
先週、突如フル・アルバム『リセス』をリリースすることを発表したスクリレックスことサニー・ムーア。2008年に活動を開始し、いまとなっては"世界でもっとも稼ぐDJ"のひとりである上に、計6つのグラミー賞も受賞し、名声も評価もトップクラスのアーティストなのだが、これが"デビュー・アルバム"というのはなんとも面白い。本人は「アルバム」というフォーマットを意識していないと主張していて、確かに一貫としたコンセプトは特にないのかもしれないが、即効性がなによりも命のシングルやEPとは違い、むしろダンスフロアすら意識していない曲が多数収録されているこの作品は、スクリレックスのクリエイティヴィティの奥深さ、およびアーティストとしての成長が垣間見られるから興味深い。チャンス・ザ・ラッパーからパッション・ピットのマイケル・アンジェラコス、BIGBANGのG-DRAGONや2NE1のCLなど、恐ろしく豪華なゲスト
Home > Features > Interview > interview with Mike Paradinas 〈プラネット・ミュー〉のこの10年――マイケル・パラディナス、インタヴュー 昔からのファンに言わせれば、かつてマイケル・パラディナスの〈プラネット・ミュー〉は、エイフェックス・ツインの〈リフレックス〉の後を追って出てきたレーベルだった。が、ゼロ年代のなかばにその形勢は変わった。〈プラネット・ミュー〉はいまや、ダブステップ/グライム/ポスト・ダブステップにおける第一線のレーベルのみならず、シカゴのゲットー・ハウスの最新型、ジュークを発信するレーベルでもあり、まあ早い話、目が離せないレーベルのひとつである。 201O年の暮れにレーベルが発表したシカゴのジュークのコンピレーション・アルバム『バングス・アンド・ワークス』は日本でもずいぶん話題になったものだが、今年に入ってからも新
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