大竹 剛 日経ビジネス記者 2008年9月から2014年3月までロンドン支局特派員。2014年4月から東京に戻り、流通・サービス業を中心に取材中 この著者の記事を見る
箱根に巨大美術館ができるらしい――。関係者からの情報をもとに3月某日、箱根の小涌谷を訪れた。 現場は温泉アミューズメント施設「箱根小涌園ユネッサン」と隣接する一等地。一帯は、「彫刻の森美術館」や「箱根美術館」など、競合美術館がひしめく、日本でも有数の美術館リゾートとして知られる。 しかし、国道1号線に面する3メートルほどの高いフェンスと、険しい山の斜面に阻まれ、建物の概要を把握するのは難しい。見上げるとクレーンが忙しそうに動き、着々と工事が進んでいる様子がわかる。警備員の目を盗んで、フェンスの隙間に目を凝らした。すると――。 視界には、鉄筋むき出しの巨大建造物が飛び込んでくる。「屋根」がついているところから察すると、完成後は和風の美術館になるのだろうか。鉄筋の分量もかなり多い印象だ。箱根が地震多発地帯だから、堅牢に作っていると推測される。 「一体、何ができるんだ」「もしかして、巨大リゾート
App StoreやGoogle Playにおけるリワード広告によるランキング操作。いわゆる「ブースト」と呼ばれる手法には、数多くのプレイヤーが関わることになる。広告出稿主であるアプリ開発者、アドネットワークや広告代理店、お小遣いアプリ運営会社。お小遣いアプリを使うユーザーと、最終的にランキングを見てアプリをダウンロードするユーザー。こうした多くのプレイヤーやユーザーを巻き込んで、ランキング操作は“実現”する(参考記事:スマホアプリ、操作されるランキング)。 舞台となるのは、アップルやグーグルといったプラットフォーマーが用意したマーケットだ。元NTTドコモの夏野剛氏は、リワード広告によるランキング操作について、プラットフォーマーの責任も大きいと話す(参考記事:「問われるのはアップルの哲学」元ドコモ夏野氏に聞くランキング操作問題 )。 一方、自らの手を動かしてアプリを作るエンジニアはそうした
「ネット炎上」という言葉が定着したのが2005年。2015年で「炎上」10周年を迎えたことになる。2005年はどんな年だったか。 2月にライブドアがニッポン放送買収に動き、4月に個人情報保護法が施行。プロ野球では楽天ゴールデンイーグルスがパ・リーグの一員となった。郵政解散で小泉純一郎首相率いる自民党が圧勝した8月には、アップルの音楽配信サービス「iTunes Music Store」が国内でサービスを開始、前年2月に招待制で始まったSNS「mixi」がこの8月にユーザー数100万人突破、同年12月に200万人突破と破竹の勢いで成長を見せていた。 現存する国内企業ブログで恐らく最古参と思われるリコー「GRブログ」の開設が8月31日。ティム・オライリー氏が「Web2.0」の概念を提唱したのもこの年だ。そして12月、秋葉原の劇場でAKB48がひっそりと初公演を行った。 事件も起きた。 きんもーっ
任天堂は、これまで反目する商売敵と見られていたディー・エヌ・エー(DeNA)と業務・資本提携をし、共同でスマートデバイス向けゲーム開発などに乗り出す。17日、突然の発表は驚きをもって即座に伝わった。株式市場も敏感に反応、翌18日は両社ともストップ高まで買われ、関連銘柄の連想買いも進んだ。これまで商品で「驚き」を世間に与えてきた任天堂にとって、こういった形での驚きの演出は珍しい。 なぜ、今なのか。なぜ、DeNAなのか。任天堂の岩田聡社長が日経ビジネスの単独インタビューに応じ、会見では輪郭しか見えてこなかった提携の背景や狙いを存分に語った。(聞き手は井上理) 家庭用のゲーム専用機(コンソール)業界の雄である任天堂が、ソーシャルゲーム業界のDeNAと手を組むという意外性に、世間は驚きました。 岩田:まあ、世の中的にはあまり縁がないと思われていたでしょうね。価値観が非常に違って、合わないのではない
宅配便最大手のヤマト運輸は1月22日、同社のメール便サービス「クロネコメール便」を3月末で廃止すると発表した。国の独占事業である手紙などの「信書」がメール便に混在すると、利用者が刑事罰に科せられる懸念があることが、廃止の主たる理由だ。 国土交通省の調べによると、2013年度のクロネコメール便の取り扱い数はおよそ20億8400冊。このうち9割が、法人によるカタログやパンフレットの送付で、残る1割が個人の利用だ。この個人利用のうち、3~4割が書類の送付に使われており、ここに信書が紛れ込む懸念があるという。 4月以降、これまでメール便を利用していた法人顧客向けには新たに「クロネコDM便」を提供。メール便とほぼ同じサービスを展開する。残る1割の個人利用の中でも、小さな荷物のやり取りに使っていた人に向けては、新たな宅急便サービスを2つ投入する。 1つは、現在の宅急便60サイズよりも小さい専用ボックス
米倉 一哉(よねくら・かずや) 心理臨床家。心理カウンセラー。1962年、茨城県生まれ。中央大学在学中から、日本医療心理学院にて心身医学・精神医学や心理療法を学ぶ。同大学を卒業後、1984年より日本催眠医学研究所(1954年に医学博士の森定一氏によって設立された医療催眠の草分け的存在)に入所し、臨床経験を積む。同研究所所長・森定一氏の死去後、そのあとを継ぎ、1999年に日本催眠心理研究所(代々木心理オフィス)を設立し現在に至る。先代より受け継いだ心の通った臨床とともに、今日の心理療法のあり方を模索している。元日本医療心理学院講師。現在、日本催眠臨床研究会理事。日本催眠応用医学会副会長。テレビ番組「たけしの万物創世記」「NHK首都圏ニュース」「TBS報道特番」等に出演。 米倉:いや、大変意味がある事だと思います。結論から言えば、今の社会状況が、多くの人がそうした作品に関心を持つ環境を作り出し
オフィスワーカーの“働き方”はここ数年で大きく変わっている。IT技術の進歩によってどこでも働けるようになったことはもちろん、子育てのために男女を問わず在宅勤務をするといったことも珍しいことではなくなった。 こういう流れの中で、“働く環境=オフィス”に求められるものも変化している。どこでも仕事ができるようになった今、オフィスは、「人が集まる場としての存在」が求められている。単に個人が事務的な作業をするのではなく、オフィスにおいて「人と人がコミュニケーションをとって情報共有すること」が大きな役割になっていく。 オフィスビルディング研究所の本田広昭代表取締役は、これから企業が必要とするオフィスは、「有能なプレイヤーが集い、濃密な情報交流をしながら知識創造していくセンターオフィス」だという。本田氏は、今後のオフィスビルの未来についてまとめた『オフィスビル2030』を今年6月に出版している。今回は、
ヤフーのビッグデータ戦略を担当する安宅和人チーフストラテジーオフィサーは20年以上分析に関わってきた。ほとんどの分析が同じような理由のために失敗を繰り返しているという。 私はこれまで20年以上にわたり、様々な分析とともに生きてきた。その経験の中から言えることが1つある。それは、この世の中で日々生み出されている分析の大部分が、意味のある意思決定や変化を何も生み出さないということだ。世の中で生み出される分析のほとんどが、結果の視点から見るとダメ分析なのだ。 私自身が仕事を始めたころに行った分析も今振り返ればそうだったし、これまで接してきた事業分析やビッグデータ分析の多くもそうだった。 そこに費やされている労力、才能、コストを考えれば、あまりにも残念なことだ。この連載は失敗の原因を見つめることから始めたい。 では、ほとんどの分析はなぜダメ分析なのか? 原因は大きく5つある。 (原因1)「何のため
データをビジュアライゼーションで一目瞭然に表現するには様々な手法があり、それぞれの手法に特定の意味がある 。今回は、古典的な3つの手法に焦点を当て、具体例を見ながらそのプロセスと目的を見ていきたい。中には人命救助につながったナイチンゲール氏のビジュアライゼーションもある。 関係性を示す まずは、歴代最古のビジュアライゼーション手法に注目したい。 それは、樹形図、いわゆるツリーのことだ。おそらく、人間は初めてビジュアライゼーションに挑んだ際、身近にあるものを参考にしたのではないだろうか。樹形図はその理論を証明するにふさわしい。 樹形図の目的は、家系であれ因果であれ物事の関係性を示すための手法である。 上の図は、アメリカ人のデザイナー ステファニー・ポザック氏による「Writing Without Words」(“言葉なしの執筆”)という作品で、「On the Road」(日本語タイトル:路上
6月7日、驟雨に見舞われた東京を離れて9時間半。飛行機と電車、フェリーを乗り継いではるばるやってきたのは、島根県海士(あま)町。隠岐諸島の真ん中に位置する離島だ。 海士町はシロイカとカキ、干しなまこが名産の漁業の町。1周約90キロメートルと比較的大きな島だが、人口は約2400人。一見すると過疎化が進むただの離島のように映る。 だがこの町がユニークなのは、人口の2割近くに相当する約300人が、都会から移住した「Iターン」の若者である点だ。しかもトヨタ自動車やソニーなどの一流企業を辞めた、いわゆるエリートが多い。海士町の何が優秀な若者たちを惹きつけるのか、その謎を探るため、私は来島した。 その初日。Iターンの若者を中心に取材を進める中、町中である若者とすれ違った。切れ長の目、真ん中で分けたサラサラの髪。その時は、どこかで見たことがある人だな、としか思わなかったが、その後にひょんなことからシナプ
先日、飲み会の席で「…だって世の中、『飛行機がなぜ飛ぶか』ということすら、本当は分かっていないんですから」という声が聞こえてきた。読者の多くの方もきっと、同じ話を耳にしたことがあると思う。 「常識と思っていることは、実は単なる思いこみだ」という文脈か、「科学なんてたいしたことないじゃないか」という話か、そこまでは分からなかったが、声にはちょっと嬉しそうな響きがあった。 もちろん科学は宗教ではない(こちら)。「信じる」ことが基本姿勢の宗教に対して、科学のそれは「疑う」ことだ。リンク先の記事の通り、科学を宗教的なものと誤解しないためにも、「本当はどうなんだ?」と疑う姿勢は大切だ。その一方で、「結局、科学といっても本当は何も分かってないんだよ」という見方は、シニカルな態度にもつながっていきそうでなんとなく違和感がある。 それはさておき、高速で空を飛び、多くの人命を載せる航空機がなぜ飛ぶか、本当に
佐藤 可士和(さとう かしわ) アートディレクター/クリエーティブディレクター 1965年、東京都生まれ。1989年、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。博報堂を経て、2000年に「SAMURAI(サムライ)」設立。主な仕事に、国立新美術館のシンボルマークデザインとサイン計画、ユニクロや楽天グループのグローバルブランド戦略のクリエイティブディレクション、セブン-イレブンジャパン、今治タオルのブランディングプロジェクト、「カップヌードルミュージアム」のトータルプロデュースなど。東京ADCグランプリ、毎日デザイン賞ほか受賞多数。慶應義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。著書は「佐藤可士和の超整理術」(日本経済新聞出版社)ほか。ウェブサイトはこちら(人物写真:大槻純一、以下同) 川島:ご安心ください。タイトルの横に入っているのは私の顔写真ですから。 佐藤:それを聞いてひと安心です(笑)
日本交通は、東京を拠点に営業する国内最大手のタクシー会社である。 「タクシー王」と呼ばれた川鍋一朗の祖父、秋蔵が1928年に創業。83年に父・達朗が跡を継いだものの、不動産事業への積極展開があだとなり、経営が悪化した。川鍋が入社した2000年には、グループ全体の負債は1900億円に達していた。 川鍋は、そんな会社の実態を全く知ることなく、幼いころから3代目になるための準備を着々と進めてきた。幼稚舎から大学まで慶応義塾。大学卒業後は米国へ留学し、MBA(経営学修士)を取得。帰国後は外資系コンサルティング会社マッキンゼーに入社し修業した。 「何らかの変化があれば、会社がおかしいなって気付いたかもしれないけど、街を歩けば、日交のタクシーがたくさん走っている。それらがすべて、多額の負債の上に成り立っていたなんて、思いもよらなかった。当時、自分の人生の課題は、あとは結婚だけと考えていたくらい。素晴ら
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