四半世紀前、日本に株・土地バブルを発生させた失敗は、異次元の金融緩和をしている我々に、何を教えてくれるのか。このほど、軽部謙介さんが著した『検証バブル失政』は、そういう読み方をされると思う。確かに、金融緩和は、昔も今も、株価を押し上げ、円高の是正に力を貸した。そして、物価を上昇させていない。実は、そのことが道を誤った大きな要因なのである。 ……… 物価上昇は、消費の需要が供給を上回ることで生じる。今、物価が上昇していないのは、消費増税によって家計の所得を抜き、需要を下げてしまったからである。円安による輸入品の値上がりによっても物価上昇は生じているが、国民の生活水準を下げるだけの「悪い」物価上昇に過ぎない。 一方、1980年代の物価安定は、なぜ生じたのか。実は、これも緊縮財政によるものだ。ただし、引き締めていたのは、財政ではなく、社会保障基金だった。厚生年金を始めとする公的年金が、毎年、GD