■「過剰診断」とは何かを読んでくださった方は、いまや早期発見・早期治療が常に良いとは限らないことをご存知であろう。検診による早期発見・早期治療によって癌による死亡を抑制できる(かもしれない)が、一方で癌を早期発見しようとすると、多かれ少なかれ過剰診断が生じる。これはトレードオフの問題である。 甲状腺がんは過剰診断が起こりやすい、つまり、治療しなくても症状を引き起こさない癌を見つけてしまいやすい、典型的な癌である。甲状腺がんの多くは進行がゆっくりで、予後が良い。また、病理解剖で数十%の人に甲状腺がんが見つかることが知られている*1。なお、日本人の甲状腺がんの年齢調整死亡率は0.5前後(10万人年当たり)である。甲状腺は体表近くにあり、現在は超音波による検査機器が進歩しているから、その気になればサイズが数ミリといった小さな甲状腺がんを発見することもできる。よって、特に何の症状も無い成人に対して
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