多重下請け構造でシステム開発などを手掛けるIT業界は、元請けのSIerか下請けITベンダーかを問わず、いずれも人月商売に明け暮れる。これは、日本のトラディショナルなIT業界を理解するうえでの基本中の基本。パッケージソフトウエア製品やクラウドサービスを売るのが基本の外資系ITベンダー、そしてFinTechベンチャーなど新興のIT企業とは一線を画す古典的な労働集約産業である。 では、人月商売のITベンダーはいったい何を売っているのであろうか。SIerがユーザー企業からシステム開発を請け負ったり、下請けITベンダーがSIerなどから特定の機能の開発を請け負ったりしても、もちろん完成したシステムや機能自体が商品というわけではない。システムや機能の価値に見合う形でカネを受け取っているわけではないからだ。 そもそも人月商売のITベンダーは、ソフトウエアの価値を提供し価値に見合う対価を受け取るという知識
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