題材となることが珍しいF1の映画で名作と呼べるのは『グラン・プリ』『アイルトン・セナ ~音速の彼方へ』『ラッシュ/プライドと友情』の3本だろう。それぞれの作品で映し出された迫力のレースとその裏側にあるヒューマンドラマに注目し、この3本が名作であるゆえんに迫る。 ジョン・フランケンハイマー監督が手掛けた本作が異質なのは、1966年のF1グランプリに同行し、実際のレースが行われる中で映画を撮るという画期的な方法を採用した点だ。地上から、ヘリコプターから、1961年のワールドチャンピオンであるフィル・ヒルが運転するマシンに搭載したカメラから……と16台の特別仕様のカメラで撮影された本物のレースは、「観客にレースを体感させたかった」というフランケンハイマー監督の言葉にたがわない迫力。これらの映像を1966年当時に実現したという事実に加え、今やハリウッドのクルーが商業的に巨大化したF1グランプリに付