まえがき/はじめに まえがき 苦しむ人の助けになりたい.看護や福祉など,支援職を目指す多くの人はまずこのように考えるのではないでしょうか.しかし苦しむクライエントの「生」の意味を考察し,そこから支援の原理を学び,研究としてまとめたいという志を抱いて入学した学生の多くは,まもなく大きな壁に突き当たります.その壁とは,そのようなクライエントの「生」の意味などという主観的なものを対象としたテーマでは客観性が得られないので科学とは言えない,したがって研究としては成立しないという,周囲からの有形無形の圧力です.多くの学生がこのような壁の前でなすすべもなく立ちつくし,やがて涙をのんで客観性(厳密には妥当性)が保証されるとされる量的科学的研究に移っていく姿は,今なお多くの大学院で見られる光景です.しかし現象学は自然科学や社会科学などと対等な資格で客観性(妥当性)をもち,異なったやり方でクライエントの生の