「精神科」「心療内科」を標榜しておいて、「中井久夫」を知らなければ、それはモグリの精神科医である。それくらいに中井先生は精神科の中で高名であり、俺は心底尊敬している。もしあなたが精神科か心療内科に通っていて、主治医が中井先生を知らないようであれば、そんな病院は早々に替わるほうが良いだろう。そう思うくらいに。 さて、そんな中井先生の論文や寄稿を集めたものが中井久夫コレクション。全4巻から成り、本書は3巻目にあたる。非医療従事者が読んでも十二分に理解できる内容であるが、決して内容が浅いわけではなく、むしろ奥深い。こんな奥深い話を、これほど平易に書けるというところが中井先生の凄いところだと思う。 以下、印象深かった部分を引用する。 大衆大学は、酷薄な言い方をすれば失業者プールでもありうる。親からいえば、中学やハイスクールを出てぶらぶらしているくらいなら、大学へ入れて学歴をつけておけば景気が回復し