羽生の四段昇段直後、「将棋世界」が企画した『東西天才少年激突三番勝負』。そこで再び、相まみえる。結果は羽生の2連勝だった。 語るべきは第2局。終盤、劣勢の羽生が鮮烈な一手を放つ。▲3九角。大駒を捨てたのだ。阿部がこれに食いつくと、たちまち形勢逆転。投了へと追い込まれる。この手は『羽生マジック第1号』とも言われている。 「まぁ、私が甘すぎましたね」 それでもまだ、東のライバルを恐れてはいなかった。ところが、わずか1年足らずのうちに、羽生は別人になっていた。自分と比べて、角1枚強くなっている。阿部は素直にそう感じたという。 「序盤や中盤を学んだんでしょうね。その知識を蓄えただけで格段に強くなってしまった。たったの1年で。プロのレベルでは考えられないことですよ」