熊本大発生医学研究所のグループが人間のiPS細胞(人工多能性幹細胞)から立体的な腎臓組織の生成に成功し、生成過程や病気の原因解明に役立つと期待されている。 その成果の中心的役割を担ったのは、大学院生の太口(たぐち)敦博さん(31)だった。 太口さんは大阪市出身で、九州大医学部を卒業。研修医を経て、東京の順天堂医院で腎臓内科医として臨床の現場に立った。人工透析に苦しむ患者に接する中で、抜本的な治療に役立つ研究をしようと決意。2009年春、熊本大大学院に入り、腎臓発生学の研究で知られる西中村隆一教授(50)の門をたたいた。 腎臓組織の生成への挑戦を始めたのはその時から。西中村教授とほぼ2人で研究を進めた。 まず、腎臓細胞の一歩手前の「前駆細胞」を作り出すことを目指した。最初はマウスの細胞を使い、従来の学説で腎臓組織になるとされている細胞群「中間中胚葉」を育てたが、なかなか成果を挙げられなかった