アンドリュー・ヘイは、つねに人間が抱える孤独を親密なタッチで描いてきた映画作家である。結婚45年を迎え、ふとしたきっかけから夫に不信感を募らせていく妻を細やかな心理描写で見つめた『さざなみ』(2015年)。親を亡くし、ひとりぼっちになった少年が1頭の馬とともに荒野をさまよう姿に寄り添った『荒野にて』(2017年)。「ひとり」であることが、そこでは観る者の感覚と共鳴するように映し出される。 そんなヘイの新作映画『異人たち』は、なんと日本の名脚本家・山田太一が1987年に発表した小説『異人たちとの夏』の映画化だ。日本では大林宣彦監督による1988年の作品があるので、映画化は今回が2度目となる。1人で暮らす中年の脚本家の男が、幼い頃に亡くした両親と再会するという基本的な設定や物語の流れは踏襲されているが、舞台はイギリスに、時代は現代に、そして主人公のセクシュアリティーはゲイに変更されている。 こ