しばらく顔を見せなかったアリスが、久しぶりに底辺託児所に来ることになった。 と思ったら、アニー(レノックス似の託児所責任者)にアリス宛のFarewellカードを渡され、寄せ書きしろと言われた。 「へ?久々に来ると思ったら、いなくなっちゃうんですか?」「ヨークシャーに引っ越すの。向こうに母親の親戚がいるらしくて、アリスの面倒を見るのを手伝ってくれるらしいから、彼女もそっちに引っ越したほうが、仕事が探しやすいって」「そりゃまた遠いっすね・・・・・」 わたしはカードの中に言葉を書きこむ。 I’ll miss you! Lots of love from Mikako××× ありきたりの言葉だ。 あの世界全体を恐れているようで同時に舐め切っているような、異様に大きな目をした白髪の女児に贈る言葉にしては、あまりに普通で、あっけない。 「それは、逃げるんだね」とその晩、電話口でS子さんは言った。 「へ