JRの神田駅周辺は、あまり行かない場所だ。新橋と並んでサラリーマンの集まる場所であり、居酒屋が多いことは分かっているのだが、ついでの用事というものがないので、なかなか足を運ぶことがない。新橋から神田にかけての山手線のガードは、戦前の赤煉瓦のガードがほぼそのまま残っていて、それだけでも都市遺跡としての価値があるが、しかもそこに無数の居酒屋が連なっているのだから、一度は本格的に探索してみたいところである。今日は本郷まで行く用事があったので、ついでに少し足を伸ばし、下調べに出かけることにした次第。まずは、名高い大衆酒場「升亀」。土曜日だというのに、ほとんど満席で、少し待ってようやく入ることができた。店内にはいると、まず目の前にあるのが一〇席ほどの囲い型カウンターで、その向こうにテーブル席が並ぶ。 四人掛けから八人掛けのテーブルが、一二卓ほどあるだろうか。壁には細長い提灯がずらりと掛けられていて、