脚気をめぐる話題:森鴎外の傲慢さ、高木兼寛の科学性合理性 土屋雅春:『医者のみた福沢諭吉―先生、ミイラとなって昭和に出現』(中公新書) 福沢諭吉は『学問のすすめ』などで誰でも知っている日本の大偉人の一人である(他の参考文献;小川鼎三著『医学の歴史』(中公新書)、小長谷正明著『脳と神経内科』(岩波新書)、平山恵造編『臨床神経内科学』(南山堂))。 脚気という病気はビタミンB1欠乏による病気である。最近では医原性の病気(医者が治療により病気をおこす)の一つとして、ビタミンB1欠乏によるウエルニッケ・コルサコフ症候群が有名である。妊娠中毒症の症状には、嘔気、食思不振などがある。点滴注射で電解質や糖を補う際にビタミンB1の投与を怠った時に意識障害、運動失調、眼球運動障害が見られ(ウエルニッケ脳症)、ビタミンB1をすぐに補給しないと、さらにコルサコフ症候群という病態が出現する。コルサコフ症候群は健忘