何回見れば気がすむのかと思いつつ、『椿三十郎』を見てしまう。NHKの黒澤明特集。そのあとネットに戻り、そういえばリメイク版の『椿三十郎』もあったっけと気づく。 三船敏郎と織田裕二。「よりによってなぜ」と思う私の感覚に、客観公正な根拠はない。1962年のあの三船敏郎が案外「いけ好かないやつ」と一部大衆には感じられていなかったともかぎらない。いつしか織田裕二が伝説的名優として平成史に刻まれないともかぎらない。 しかし、たとえば昭和に生まれ昭和を十分生きた人にとって、『椿三十郎』といったらこの『椿三十郎』しかありえないだろう。 古い映画は、理の当然として、生涯に見る回数が新しい映画に比べて多くなりやすい。そしてまた理の当然として、「懐かしい」という思いは古い映画にしかもてない。古ければ古いほど「懐かしく思い出す」回数は今後も増えていくだろう。老いた三船敏郎を見ることができ、かつ若い三船敏郎も映画