それは1976年7月29日に始まった。ニューヨーク市北ブロンクスでの出来事である。夜中の午前1時頃、2人の女性が停車中の車の中でおしゃべりをしていた。薬剤師のドナ・ローリア(18)と準看護婦のジョディ・バレンティ(19)である。ボーイフレンドの話をしていたらしい。熱心なあまりに男が近づいて来たことに気づかなかった。 やがてドナはおやすみを告げ、ドアを開けて車から出ようとした。その時に初めて数メートル先の男がこちらを凝視していることに気づいた。茶色い紙袋の中に手を入れて何かを取り出そうとしている。 「あの人、何してるのかしら?」 男が取り出したのは銃だった。次の瞬間、ドナは首を撃たれていた。傷口に手をやると肘を撃たれた。ドナはその場に崩れ落ちた。 キャーッ。 叫び声をあげたジョディは太腿を撃たれた。ハンドルの上に倒れ込むと、クラクションがけたたましく鳴り響いた。これに動揺した犯人はそのまま逃