「ハゲると女性にもてない」という信念には不思議な点がある。 インタビューの回答者には、ハゲを理由に女性に嫌われた経験をもつ人も、直接「ハゲは嫌い」と言われたことがある人もいなかったのだ。 じつはハゲていることの劣等感は、女性からの働きかけによって生まれたり維持されたりしているのではない。それは男性同士のからかいややりとりの中でつねに維持され更新され続けているのである。 からかいは、遊びであるがゆえに「真面目に受けとってはならない」とされる。 からかわれる側は怒りの表出や真面目な対応を封じられる。 また、からかう側は自らの行為を免責される。 人格的な社会的成熟度を試験するような性質が、ハゲをめぐるからかいには内包されているのだ。ハゲた男性が「おい、ハゲ」と呼ばれるとき、彼は同時に自らの人格をテストされているのである。 ハゲた男性をからかう側は、ことさら攻撃することによって、自らがハゲという好