人を裁くことができるのか、死刑判決にかかわることができるのか−。5月にスタートした裁判員制度が、鹿児島県内の宗教界に波紋を呼んでいる。「国民の義務」として参加を呼び掛けている団体もあるが、死刑に反対する宗派などは「信者が一生苦しみ続ける」と懸念、制度と教義のはざまで揺れる。一方、最高裁は「思想や信条を理由に裁判員を辞退できるかどうかは各裁判官の判断」と明確な基準を示していない。 死刑制度に反対する真宗大谷派。裁判員制度が始まった直後の6月、裁判員制度の見直しを宗派の議会で決議した。「殺してはならない、殺させてはならない」とする教えに死刑は反するとし、「死刑廃止の議論が十分になされていない中で裁判員制度を容認することはできない」という見解を示す。 浄土真宗本願寺派鹿児島教区の僧侶も「時には悪事を犯すことがあるのが人間。更生を第一に考えることが大事ではないか」と死刑制度に疑問を投げ掛ける。