護王神社再建から建築へ、そして江之浦測候所へ 2001年頃からは、杉本自身もC型肝炎で自らの死と対峙することとなる。そうした中で着手するのが直島の護王神社再建である。 水軍高原氏が築いた直島城の裏門を守護する役目で、17世紀に現在地につくられたと伝えられる護王神社は、老朽化が進み、2000年頃には拝殿の倒壊にまで至っていた。それをアーティストが空き家など生活空間を作品化する「家プロジェクト」の枠組みのなかで改修することとなり、杉本に託された。 施工中、大石が設置される前の護王神社(撮影:杉本博司) 杉本は、複合的に古神道の要素を取り入れ、神の宿る空間にふさわしい比率を念頭に、古墳のような地下が、地上の神社と光でつながるというコンセプトを設定。この、作品でありながら直島本村の歴史を背負った地元の人のための神社の再建とともに杉本も病を克服。これを契機に彼の建築活動も本格化していき、2008年に