ブックマーク / www.10plus1.jp (9)

  • シリコンバレーの解決主義

    エフゲニー・モロゾフ 「シリコンバレーの解決主義」の読み方 竹内雄一郎 ITの世界では、開発者つまりエンジニアが普遍性を勝手に想定することが多い。国境や地域差といったものはたいして重要視されず、まったく同一のサービスが、当たり前のように全世界でロールアウトされる。InstagramだってTwitterだって、サービスの内容を国ごとに細かく変えたりはしていない。ITエンジニアはすでに世界を質的にはフラットなものとして捉えており、それは地域ごとの個別対応にはコストがかかるから、といった消極的な理由からだけではない。ITエンジニアの方法論や考え方、より正確に言えば彼らのメッカであるシリコンバレーの方法論や考え方で世界中を覆い尽くすことが、紛れもなく正しいことだと考えているのだ。シリコンバレーの起業家はすぐに自分たちのアイデアが「世界を救う」などと口にする。それは半分は方便だが、もう半分は気だ

    シリコンバレーの解決主義
  • 何かをハックすること

    日々デザインをしていて思うのは、世界はすでによくできたモノで溢れているということだ。誰もが認める名作から100円均一で売っているような器まで世の中にはモノがすでにたくさんあって、ダメだったりよくできていたり、安かったり高かったりする。デザイナーとしてゼロから新しいものをつくってみたいという欲求はあるのだけれど、何か最小限のものを付け足したり視点を変えてみるだけで、いつもの風景が違って見えるようなことはできないだろうか。例えば有名なことば遊び「ここではきものをぬいでください」のように、句点を打つ位置によって「ここで、はきものをぬいでください」「ここでは、きものをぬいでください」といった具合に文章の意味が変わってくるように、最小限のデザインによって目の前にある見慣れた風景が少しだけよく見えたり、愛情をもって接することができるようにならないだろうか。もう少し現実味をもつように言い換えてみると、見

    何かをハックすること
  • 中動態の視座にある空間 ──國分功一郎『中動態の世界』ほか

    ケア空間に携わるなかで この2-3年で、高齢者や子どもを中心とする利用者の生きる空間に携わる機会が増え、いわゆるケアを必要とする人々にも多く触れてきた。そのなかで、会話が不自由になった高齢者や、まだ思うように言語化できない子どもたちが、何を欲しているのか、その意志や責任を確認することのできないもどかしさに、苦悩することが度々あった。 さらに、こうしたケアの現場では、基的にはケアを「する」/「される」という立場の定義が明快で、サービスのシステムとしては疑いようのない関係である。しかし、現場で起きている事柄のなかには、例えば「ある介護スタッフが利用者である誰々さんと日向ぼっこしている」というように、サービスの「する」/「される」というパーススペクティブでは表現されえない場面は多々ある。 こうした悶々とした思いから解き放ってくれたのが、今回の書評で挙げる國分功一郎『中動態の世界──意志と責任の

    中動態の視座にある空間 ──國分功一郎『中動態の世界』ほか
  • 10+1 web site|中動態・共話・ウェルビーイング──國分功一郎『中動態の世界』ほか|テンプラスワン・ウェブサイト

    今年の4月に大学で研究室を構えてから、久しぶりに大量のを日常的に購入する生活に戻った。そして、気づいたら新刊よりも昔ののほうにのめり込んでいる。たとえば、直近で深く読み解いたは、1928年にパリで刊行された九鬼周造の『Propos sur le Temps』だ。長い時間を経て、多くの論者のフィードバックを受けることで、古いは発酵していく。九鬼のにしても、同時代のベルクソンやハイデッガーの考えに触発されながら、東洋的時間の深度にダイブしている。 私もまた、直観に従って好奇心を走らせてみたら、いつのまにか比較言語学から20世紀中葉のインタフェース研究まで、長い時間の尺度を行き来するようになった。去年よりJST/RISTEXの「人と情報のエコシステム」領域で、「日的Wellbeingを促進する情報技術のためのガイドラインの策定と普及」プロジェクトに参加し、日の社会文化となじみの良い

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  • オブジェクトと寄物陳志──ブリュノ・ラトゥール『近代の〈物神事実〉崇拝について』、グレアム・ハーマン『四方対象』ほか

    オブジェクトと寄物陳志 ──ブリュノ・ラトゥール『近代の〈物神事実〉崇拝について』、グレアム・ハーマン『四方対象』ほか 思想、哲学の分野で、僕にとって今年(2017)に起こった忘れがたい出来事は、ブリュノ・ラトゥールの著作が続々と翻訳され始めたこと、そしてグレアム・ハーマンの『四方対象──オブジェクト指向存在論入門』(人文書院)が日語で読めるようになったことである。ちなみに僕自身が8月に発表した『実在への殺到』(水声社)でも、ハーマン論に2つの章が割かれており、第1章からラトゥールについて論じられている。だからというわけではないが、彼ら2人の間に立って諸問題を思考することは、思想や芸術の今世紀の世界的な潮流を視野に収めるためにも、今日とりわけ重要であると思うのだ。 来年はさらに、ハーマンについては『ゲリラ形而上学』が、ラトゥールについては『社会的なものを組みなおす』の翻訳が刊行される見通

    オブジェクトと寄物陳志──ブリュノ・ラトゥール『近代の〈物神事実〉崇拝について』、グレアム・ハーマン『四方対象』ほか
  • 世界とのインターフェイス──グーグルマップの社会学をめぐって

  • 世界とのインターフェイス──グーグルマップの社会学をめぐって

    地図のパーソナライゼーション、「いま・ここ」の多層化、航空写真やストリートビュー、データベース化......これらの特長をもつグーグルマップは、都市や社会を認識する枠組みにどのような影響を与えているのだろうか。対談では、社会学の観点から地図を研究してきた若林幹夫氏と、『グーグルマップの社会学──ググられる地図の正体』(光文社、2016)を上梓した松岡慧祐氏をむかえ、グーグルマップ以降の地図の想像力のあり方を議論する。 〈地図〉から〈マップ〉へ──物語性をめぐって 若林幹夫氏 若林幹夫──『増補 地図の想像力』(河出文庫、2009)のもとになった『地図の想像力』(講談社、1995)はいまから20年前に書いたです。私は都市論やメディア論の仕事は一貫してやってきましたが、それ以外はその都度関心が向いたことをやるという仕事のスタイルなので、最近は地図について集中して考える機会がなかったのですが

    世界とのインターフェイス──グーグルマップの社会学をめぐって
  • 「人新世(アントロポセン)」における人間とはどのような存在ですか?

    新たな地質年代 いまから46億年前、太陽から3番目の位置に岩石質の惑星が誕生した。後に地球と名づけられるこの惑星は、月の形成や地軸の傾き、生命の誕生と多様化など、さまざまな紆余曲折を経て現在にいたる。紆余曲折の一端は、地球に堆積した地層のなかに痕跡として残されている。 地層のできた順序を研究する学問は層序学と呼ばれる。地質学の一部門である。その層序学によると、もっとも大きな地質年代区分は「代」(古生代、中生代、新生代など)で、それが「紀」(白亜紀、第四紀など)に分かれ、さらに「世」(更新世、完新世など)に分かれる。現在は1万1700年前に始まった新生代第四紀完新世の時代である、というのがこれまでの定説だった[fig.1]。 fig.1──地質年代(作成=Masaqui) それが現在、すでに完新世は終わっており、新たな地質年代に突入しているとする学説が真剣に検討されている。新たな地質年代の名

    「人新世(アントロポセン)」における人間とはどのような存在ですか?
  • 流動する社会と「シェア」志向の諸相

    宮台真司氏(左)、門脇耕三氏 「シェア」の概念──「純粋公共財」と「クラブ財」 『私たちが住みたい都市』 (山理顕編、平凡社、2006) 門脇耕三──今回の「10+1 website」の特集は「シェアの思想/または愛と制度と空間の関係」と題しており、「参加と包摂」を旨とする民主主義の回復と倫理の関係についてさまざまなステートメントを発せられている宮台さんと、このタイトルが含みうるフィールドや空間の現在と今後に関して、複層的に考えたいと思っています。今日はよろしくお願いします。 いま「シェア」をめぐるさまざまな動きが注目され、建築を学んでいる学生にも「シェア」は非常に注目されています。卒業設計のテーマとしてシェアハウスやフラットシェアを選ぶ学生も多くいます。ただ建築系の学生の場合、どうしても文献的な掘り下げが追いつかず、「近代家族」という概念すら知らないまま「シェア」について語っていたりす

    流動する社会と「シェア」志向の諸相
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