★中沢新一『日本の大転換』を、しばらく前に一読した。率直に言って、読む前から嫌な予感しかしなかったのだが、実際に読んでみると、予想をはるかに越える酷い本だった。多くの方々が書評を出しているが、この本の基本的性格があまり理解されていないようなので、ここに私の見解を提示しておきたい。 ★まず結論から。『日本の大転換』は、「反ユダヤ主義の傾向を隠し持った日本文化優越論、意識革命に立脚した共産思想喧伝のパンフレット」であり、その思考形態は、ナチズム、ヤマギシ会という農業ユートピア、オウム真理教のような全体主義カルトのそれと基本的に同型であると考えられる。 ★同書の基本的な論旨は、以下の通り。ベースとなる考え方は、『贈与論』で知られるマルセル・モースの弟子であるアンドレ・ヴァラニャックという文明学者の「エネルゴロジー」という理論である。中沢によれば、ヴァラニャックは、原子力までに至る人類のエネルギー