日本の産業は、卸小売業を含むサービス産業を中心に、欧米諸国に比べて労働生産性が低いと言われることが多い。実際、日米の2006年のGDP統計から両国の労働生産性を計算してみると、下表のとおり、同年中の平均為替レート(1ドル=116円)でドル換算した日本の労働生産性は、対米国比で0.76倍と、米国を大幅に下回る水準になっている。ただ、同様の計算を2000年のデータで行ってみると、日本の労働生産性の対米国比は1.06倍と、日本が米国を上回っていたという結果が得られる。 この結果をそのまま受け止めると、2000年から2006年までの間に、日米のいずれか、あるいは双方で生産効率の大幅な変動があったように見える。しかし実際には、そのような大きな変化が生じたとは考え難い。そうなると、両国の物価上昇率の差と為替レートの変動が影響している可能性が想起される。そこで、両国の物価上昇率の差と為替レートの変動の影
深尾氏: 2000年から2006年にかけて、政府部門などを除いた市場経済では、リストラ型の成長が顕著に見られました。労働の投入を減らし資本の投入も殆ど増やさない中で、アウトプットを拡大させた結果、生産性の著しい向上が達成されました。しかし、2005~2006年に関しては、2000年以降の成長パターンとは異なる傾向が見られます。まず、労働投入――特に労働の質――が大幅に上昇しました。非正規雇用の代わりに正規雇用が増えた結果です。資本投入も比較的堅調に増加しました。ただし、労働を中心に要素投入が大幅に増えたため、全要素生産性(TFP)は下落しました。これまで「雇用なき景気回復」という認識の下、非正規雇用の拡大による技能蓄積の停滞やIT投資の低迷が懸念されていましたが、2005~2006年だけを見ると、雇用の量的・質的回復によるTFP上昇の減速という、近年に無い新しい現象が起きたのです。 製造業
日本の製造業はこれまで高い国際競争力を維持してきましたが、労働シェアの60%以上を占めるサービス産業の生産性は欧米に大きく遅れをとっており、日本経済全体が生産性向上を図るためには、サービス産業の生産性を改善することが急務となっています。RIETI政策シンポジウム「グローバル化時代の生産性向上策 -サービス業の活性化と無形資産の役割-」では、国際的な生産性比較のプロジェクト成果を中心に、生産性格差の要因を分析し、サービス産業を中心とした生産性の上昇をどのようにして達成するべきかについて議論します。本コーナーでは、シンポジウム開催直前企画として、宮川努ファカルティフェローに本シンポジウムの特徴や論点について伺いました。 RIETI編集部: 昨年7月に開催された政策シンポジウムにおいて、宮川先生は『日本における全要素生産性向上の源泉と潜在成長率』と題する報告を行われましたが、この1年間でどのよう
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