1.怒りに任せて言い渡される解雇 退職を申し出るなど、経営者の意向に沿わない言動をとったとき、突然クビを言い渡されることがあります。 本邦では、客観的合理的理由・社会通念上の相当性が認められない解雇は効力を有しません(労働契約法16条)。そのため、碌に解雇理由の検討すらなされないまま、解雇の意思表示がなされたとしても、そうした解雇が有効と理解されることはあまりありません。 しかし、然るべき手続も踏まず、怒りや激情に任せて言い放たれた「解雇する。」という言葉は、有効・無効を論じる以前の問題として、そもそも法的な意思表示とみることができるのでしょうか? この問題を考えるうえで、近時公刊された判例集に、参考になる裁判例が掲載されていました。札幌地判令2.5.26労働判例1232-32 日成産業事件です。 2.日成産業事件 本件で被告になったのは、道路工事用資材の販売等を業とする株式会社です。 原