『日本史研究』563号(2009年7月号、つまり最新号)に掲載された高橋昌明氏の「六波羅幕府という提起は不当か−上横手雅敬氏の拙著評に応える−」という論考は、ある意味「鎌倉幕府を鎌倉幕府たらしめている差分は何か」に関わる論争である。 高橋昌明氏はその著『平清盛 福原の夢』(講談社撰書メチエ 2007年)において平清盛の政権を「六波羅幕府」と呼べるのではないかと提起した。それに対する上横手政敬氏の書評(『日本史研究』556号、2008年12月号)において高橋氏の「六波羅幕府」という提起を批判した。上横手氏は鎌倉幕府の基準からすれば平家政権は「幕府」と呼ぶには値しない、ということである。 上横手氏は 六波羅が幕府であることを証明する場合、六波羅の中に鎌倉幕府と共通するものと探すのは当然である。それに対して著者(高橋氏)は、逆に鎌倉幕府の中に六波羅と通じるものを求める。形式論理からいえば、明らか