北野天満宮を南下して一条通りに入ると、誠養軒という中華料理屋がある。京都市に住みはじめて3年弱が経つが、この街で何度も訪れる料理屋は誠養軒だけだ。大袈裟に喩えているわけではなく、通っていると言えるのは誠養軒しかない。 週末の昼下がり腹が減ったとき、もしその日が快晴であるとするならば、頭をよぎるのは誠養軒の赤いのれんだ。日々の生活の中で無性に食べたくなるというわけではなく、晴れた週末の昼過ぎに突如、誠養軒へ行くことが最も素晴らしいことのように思えてくるのである。そうなれば、焼餃子や炒飯を求めて、赤い提灯を目指して歩きはじめるほかない。 誠養軒の店頭赤い提灯が目に入ると、空き席があることを祈りはじめる。誠養軒のキャパシティは、4人掛けのテーブルがふたつとカウンターが2席。マスターがひとりで切り盛りするお店なので、あっという間に埋まってしまう。運悪く満席のタイミングで入店すると、マスターから「い