「ケアの哲学」 [著]ボリス・グロイス ヤングケアラーや介護現場の苦境が報じられる一方、ケアという概念はここ数年、倫理学・政治学・批評等で総じて積極的な意味で用いられてきた。ただ、流行語の常として、その語られ方がときに易(やす)きに流れることがあるのも確かだろう。ならば、今こそケア論のケアが必要ではないか。 本書では、世界的な美術批評家ボリス・グロイスがケアの哲学を語る――しかも大胆かつ意外なやり方で。彼はソクラテス以来の哲学をケアの思想として読み替える一方、従来のケア論にハイデガーやアレントの哲学から介入しようとした。異なる知的体系を遠慮なくシャッフルする彼のやり方は、現代アートの手法を思わせる。 そもそも、ケアの公共化は、革命の時代が終わり「自己保存」が人類の最大の関心事になったことと関わる。著者によれば、それを象徴するのが病院と美術館である。病院が人体を治療し保護するように、美術館は