原発を推進する人たちは、原発を止めたら今までのような「快適な暮らし」はできなくなるよ、と脅す。それによって不安を感じてしまった若い人たちもいるかもしれない。しかし「快適な暮らし」とは、いったい何なのだろう? 私事になるが、先週母がまた入院した。彼女は昭和5年生まれである。物心ついてから思春期までをずっと戦時下で過ごした。「快適な暮らし」とは、もちろんほど遠い。数日前、母の担当である若い看護師が、お母さんは楽しいときに何となく口ずさむ歌は何ですか?と聞くので、母は、そうやねぇ、たとえば「兵隊さんよありがとう」とか、と答えた。 その歌は、ぼくもうたうことができる。ぼくは昭和31年生まれで、小・中学校は戦後民主主義教育、社会は高度経済成長という時代に育った。そのぼくが十代のある時、戦時中に流行った軍歌の多くを自分が歌えることに気がついて、愕然としたことがあるのである。 理由は簡単だ。母は子供から