ヨーロッパは「森の世界」である。 地中海文明を築き上げたローマ人にとって、北方のヨーロッパに広がる広大な森は、恐るべき存在だった。 ローマの哲学者セネカは「荘厳で巨大な樹木が欝蒼(うっそう)と茂り、豊かな葉をつけた枝のために空が見えなくなっているような森の中にはいってゆくと、樹木の力と森の不可思議な力が神性を垣間みせてくれる」と語っている。 森に対するローマ人の畏怖(いふ)感は、そのままゲルマン人に対する恐怖の感情へとつながっていく。広大な森に住むゲルマン人たちの生活様式はローマ人のそれと全く異なっていたために、かつてギリシア人が自分たちに通じない言葉を話す人々という意味で用いたバルバロイという名でゲルマン人たちも呼ばれていた。 ゲルマン人はやがてローマ帝国領内に深く侵入し、部族ごとにそれぞれの国家を建設する。 ローマは滅び、地中海文明はその終末を迎えた。代わって、ガリアを中心とする森の文