製薬大手ノバルティスの治療薬に関する論文不正事件で、東京地裁は16日、無罪判決を言い渡した。元社員がデータを改ざんしたと認める一方で罪には問えないとした結論に、専門家は研究不正を法で裁くことの難しさを指摘した。ただ、不正の背景として批判された製薬会社と研究者のもたれ合いをチェックする制度づくりは始まっている。 判決は、白橋伸雄被告(66)が自社の高血圧治療薬「ディオバン」の効果が高いとする論文を掲載してもらうため、データを改ざんしたと認めた。一方で、法律上は虚偽記述・広告の罪には当たらないと判断した。弁護人の手島将志弁護士は「不満な点は多々あるが、結論は極めて妥当。そもそも刑事事件で裁かれるべきなのか疑問だ」。 この問題で厚生労働省の検討委員を務め、裁判の傍聴を続けた循環器内科医の桑島巌・臨床研究適正評価教育機構理事長は「研究論文の不正を法律で裁くことの難しさが表れた判決だった」と話した。