「追い詰められていた、やらない選択肢はなかった」――。 唇をかみ締め、言葉を選び、そして、自らを自らの言葉で罰しつづけた日本大学のアメフト選手の記者会見。 「少し考えれば自分のやったことは間違っていると前もって判断できたと思う。もっと意志を強く持つことが……」 記者の質問に真摯(しんし)に答え続けた彼の勇気ある行動は、多くの人たちの胸を打ちました。 私は切なかった。とにかく切なかった。人間の弱さと強さを見せつけられ、言葉にできない悲しさと憤りを覚えました。 と同時に、何度も何度も「なぜ、ラフプレーをしたのか?」「なぜ、指示に従ってしまったのか?」と繰り返し質問する記者たちに、「アナタだって同じようにしてしまうよ」と言ってやりたかった。 「ミルグラム実験」――別名「アイヒマンテスト」。これは1963年、米国の社会心理学者スタンレー・ミルグラムが、ホロコーストで起きたメカニズムを理解するために