脊椎圧迫骨折で暫(しばら)く入院しました。これで痛感したのが、立つたりしやがんだりすることの辛さでした。床に落ちたものを拾ふのがあんなに大層な作業だつたとは、つひぞ思ひ至りませんでした。 ここではたと気付いたのが、戦後の若者の体力低下の原因です。畳生活を追放したからに違ひない、それは高度成長以降だと。 ≪便利快適な生活の代償≫ 畳生活は正座を原則とします。脊椎が垂直になり長時間この姿勢を保つてくたびれません。正しい姿勢は正しい呼吸法に導きます。柔剣道で激しい格鬪の後、正座して呼吸を鎮めるのは、自然に深呼吸(腹式呼吸)するからです。 あぐらは、座禅でお分かりのやうに尻の下に座布団を入れないと背中が曲がります。背中が曲がると呼吸も浅くなります。あぐらは長時間座るときの姿勢ではありません。日本人は、江戸期に正しい姿勢の保持を日常生活の中に取り込んだのです。これが戦後、特に高度成長期以降、椅子やベ