ただ働き。通常おれのようなエージェントが(割に合う、合わないの差はあっても)報酬もなしに動くことはない。そういう意味では、それは仕事とは呼べない依頼だった。何しろただ荷物を運ぶだけだったから。もちろん時と場合によっては詳細なスケジュールを書き出し、あらゆる突発的なトラブルを想定し、ほかのエージェントと組むこともある。運ぶ荷物の中身について聞かされない依頼の場合はとくにそうだ。そういう場合は往々にしてチンピラややくざども、あるいは道警の連中が絡んできてうっとうしいことになる。でも今回は違う。依頼人はおれを学園から引き取り、成人(かつては20歳をもって成人としたらしいが)である15歳まで育ててくれた物好きとしかいいようのない老婆で、荷物の正体だってわかっていた。だから、おれはそのババアの依頼を引き受けた。いや、おれ自らがその依頼を提案し、引き受けた。もちろん金は発生しない。この歳になるまでにど